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アフターレポート

2016年5月20日(金)、株式会社セミナーインフォ主催により、東京・千代田区のベルサール神田で「金融フォーラム2016」が開催された。今回で5回目を迎えるこのフォーラムは、業界を取り巻く環境変化や規制の動向等、付加価値の高い最新情報を提供するための情報イベントである。

今回は、「〜規制対応と金融イノベーションの進展〜」を統一テーマに、全19セッションが開かれた。参加エントリー総数は3千5百件にのぼった。

フォーラムでは、まず基調講演として、金融庁監督局審議官の西田直樹氏が登壇。「地域金融機関に期待される役割」と題して、地域金融機関の役割や課題、金融行政における重点施策などについて説明。積極的な活用が期待されている「地域経済活性化支援機構」の機能や取組み状況、「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況などについても説明した。

その後、セミナー会場A・B・C・Dにおいて、Regulation、Marketing、Risk Management、Solutionの4テーマについて、18のセッションが行われた。
【基調講演】

地域金融機関に期待される役割

金融庁 監督局 審議官 西田 直樹 氏
金融庁 当日、「地域金融機関に期待される役割」と題して、金融庁監督局審議官 西田直樹氏が基調講演を行なった。

西田氏は、まず平成27事務年度金融行政方針に掲げられた具体的な重点施策について説明。融資先企業へのヒアリングをもとに金融機関との対話を進めて金融仲介機能の質の改善を目指すことや、各金融機関の金融仲介機能の発揮状況を客観的に把握できる多様なベンチマークを検討することなど4つの施策について説明。「金融仲介の改善に向けた検討会議」における主な意見も紹介した。

次に、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げられた施策について説明。様々なライフステージにある企業の課題解決に向けた自主的な取組を官民一体で支援。埋もれている地域資源を活用した事業化・創業支援、サービス業をはじめとした生産性の向上や成長支援、再出発に向けた環境整備・事業承継支援など円滑な事業整理のための支援など、金融等による「地域企業応援パッケージ」のPDCAサイクルの確立を目指していると述べた。

続いて、「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況に触れた後、地域経済活性化支援機構(REVIC)の活動を紹介。再生支援業務や専門家派遣業務、ファンド関連業務、個人保証付債券の買取業務など主な機能について解説した。

最後に、地域経済活性化支援機構により地域金融機関等と連携してどんな取組が行われているかについても説明。さらに、REVICの100%子会社「日本人材機構」についても言及。大都市圏の「経営幹部人材」を紹介するといった事業の概要や活動状況を紹介し、積極的に活用して欲しいと述べた。

リスクベース・アプローチによるマネロン・テロ資金供与対策の実践〜改正犯収法、犯罪収益移転危険度調査書を踏まえて〜

弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー 弁護士(日本/NY州) 金澤 浩志 氏
弁護士法人中央総合法律事務所 基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。A会場ではRegulationをテーマに5つのセッションが開かれた。まず「リスクベース・アプローチによるマネロン・テロ資金供与対策の実践〜改正犯収法、犯罪収益移転危険度調査書を踏まえて〜」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー 弁護士(日本/NY州) 金澤浩志氏が報告した。

金澤氏は、まずAML/CFTにおける国際的協調体制の重要性について説明。IT技術が高度に発展した今日、AML/CFT対応が不十分な国を抜け道としてマネー・ローンダリングが敢行されるおそれが高いと述べ、リスクベース・アプローチが重要であると説明。FATF勧告によるリスクベース・アプローチやFATFによる相互審査について解説した。

次に、現行犯収法に対するFAFTの指摘に対して、2014年改正犯収法においてどのような措置を行っているかを解説。犯罪収益移転危険度調査書策定の経緯と同調査書におけるリスク評価結果についても説明した。

最後に、リスクベース・アプローチに基づく実効的なAML/CFT体制を構築するためには、フロント部署、コンプライアンス・リスク管理部門、内部監査の3つの防衛ラインによるAML/CFT管理態勢の構築が重要であると指摘。

顧客との接触、取引開始といった「入口」から取引継続中の「中間」、疑わしさを検知したと場合のオプションといった「出口」まで、3段階でのML/CFT管理態勢の構築が必要であると述べた。

金融モニタリングレポートおよび金融行政方針の着眼点〜金融機関は何をすれば良いのか?〜

元三菱UFJフィナンシャル・グループ コンプライアンス統括部長
専修大学商学部 准教授 渡邊 隆彦 氏
三菱UFJフィナンシャル・グループ A会場では続いて、「金融モニタリングレポートおよび金融行政方針の着眼点〜金融機関は何をすれば良いのか?〜」と題して、元三菱UFJフィナンシャル・グループ コンプライアンス統括部長 専修大学商学部 准教授 渡邊隆彦氏が報告した。

渡邊氏は、まず2013年の「金融モニタリング」導入以降、新しい金融行政が行われており、金融機関側にも発想の転換が求められていると指摘。

金融モニタリングを「業態別」にどう読み解くか、メガバンク、地域銀行、証券会社、保険会社、海外金融機関別に解説。地域銀行については、担保・保証依存から事業性評価に基づく融資・本業支援への転換が必要とされているが、事業性評価について融資先企業へのヒアリングでは厳しい声が大きいことを示した。

また、ビジネスモデルの持続可能性については、不十分、もしくは二極分化しており、地銀経営戦略の方向性として、規模の利益を働かせて効率化のメリットを指向する道と、規模の拡大にこだわらずビジネスモデルの違いにより他行との差別化を図る道があると述べた。

次に、金融モニタリングの「個別着眼点」の読み解きとして、ガバナンス、フィデューシャリー・デューティーの徹底、反社・マネロン対応、IT技術の進展への対応について解説。マネロン対応では、顧客デューディリジェンス、取引モニタリングの高度化により、「疑わしい取引」の届出を適切に行うと共に、システム化は必須であると述べた。

最後に、金融行政の目的を再確認。従来の「規制」に加え、金融仲介機能等を金融機関が適切に発揮することを「促進」する役割を担うようになり、金融機関側も「守り」と「攻め」を別々にとらえるのではなく、あわせて考えなければならない時代になっていると述べた。

インフラファンドの実務と展望

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 小林 英治 氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 樋口 航 氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 続いて、「インフラファンドの実務と展望」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 小林英治氏と、パートナー 弁護士 樋口航氏が報告した。

まず、インフラ投資やプロジェクトファイナンスとは何かについて説明した後、プロジェクトに対する投資・ファイナンス上のリスクを整理。

SPC(特定目的会社)が使われる理由について、各種契約において事業に関連するリスクを契約相手方に分散し、SPCが単独で負担するリスクを限定するためであると説明。レンダーがリスクコントロールできることが重要だと述べた。また、開発前段階、開発段階、運営段階の各フェイズにおける主なリスクを説明した。

次に、インフラファンドへの投資手法について解説。投資事業有限責任組合(LPS)を利用したファンドの組成や運用、信託を利用したファンドの組成や運用について言及した。

続いて、上場インフラファンドのストラクチャーの例を示し、その組成や運用を説明。投資対象や導管性要件、上場規則の概要について説明した。最後に、上場インフラファンドであるタカラレーベン・インフラ投資法人の概要を紹介した。

FinTech/決済サービスをとりまく法規制の最新動向

堀総合法律事務所 パートナー 弁護士
千葉大学法科大学院講師 企業法務担当 藤池 智則 氏
続いて、「FinTech/決済サービスをとりまく法規制の最新動向」と題して、堀総合法律事務所 パートナー 弁護士 藤池智則氏が報告した。

藤池氏はまず、情報通信技術の向上とスマートフォン、SNS等の利用の普及により、金融とITの融合(FinTech)による技術革新で事業会社の決済関連サービスが促進。決済システムの根幹を担いかねない状況になり、金融機関によるIT企業の取り込みが行われている状況を説明した。

次に、従前の法的整理と金融審の議論を紹介。前払式(振込、電子マネー等)や後払式(クレジットカード、ファクタリング等)の場合の規制の適用に関する解釈論について説明。

仮想通貨(ビットコイン)の法的性質についても解説し、価値の源泉は仕組み自体に対する信用(希少性、利便性、安全性)であり、通貨類似の機能をもつものだと述べた。また「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告」を紹介した。

続いて、本年3月4日に国会に提出された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」の内容を紹介。

FinTechに関わるものとして、@銀行等による金融関連IT企業への出資の容易化、A銀行子会社による決済関連事務等の受託の容易化、BITの進展を踏まえた資金決済法の規制の合理化、C仮想通貨に対応するための資金決済法の改正、D電子記録債権の利便性の向上を取り上げ、ポイントを解説。

最後に、法律が施行されれば、銀行・銀行持株会社が金融関連IT企業に対してより広く出資でき、金融機関の決済関連事務の効率化・共通化を促進。統合・再編に向かって、ダイナミックな形でオープンイノベーションによる決済サービスが進化すると述べた。

金融機関のガバナンス向上と生き残りのために社外取締役に期待される役割

岩田合同法律事務所 特別顧問(前金融庁長官) 細溝 清史 氏
岩田合同法律事務所 弁護士(八千代銀行社外取締役) 坂本 倫子 氏
岩田合同法律事務所 弁護士(モデレーター) 松田 貴男 氏
岩田合同法律事務所 A会場の最後のセッションでは、「金融機関のガバナンス向上と生き残りのために社外取締役に期待される役割」と題して、第1部では、岩田合同法律事務所 弁護士 松田貴男氏が報告。第2部では、岩田合同法律事務所 特別顧問 細溝清史氏、弁護士 坂本倫子氏を交えて、パネルディスカッションが行われた。

第1部では、松田氏が銀行の事業やガバナンスに関する現在の法制度の概要をおさらい。銀行の取締役と取締役会の役割などについても確認。社外取締役の資格要件や、独立取締役の役割や責務についても触れ、銀行の事業を規律する法制度についても、金融庁の資料を示して説明した。

続いて、第2部のパネルディスカッションに移り、「銀行に独立社外取締役導入を求める意義」、「銀行の社外取締役に求められる知識や経験」、「銀行の『生き残り』のためのビジネスモデル」、「銀行のガバナンス向上と『生き残り』戦略構築・実践の相関性」、「銀行の社外取締役の属性毎の役割期待」などのテーマで議論。

社外取締役に求められる知識や経験について、細溝氏は、望ましいのは銀行経営に携わった経験があること、銀行トップ経験者が地域銀行の社外取締役を務めるなど、もっと人材の流動化が図られることが大切だと述べた。

坂本氏は、自身の経験を踏まえ、コンプライアンスに関することは弁護士としての専門性が生かされていると述べ、経営判断については有事と平時の見極め、ガバナンスに関する相談などが求められていると説明。銀行業務の経験については、なくても良いが、経験があれば、商品企画など、他行の情報も把握して有効な提言ができるだろうと述べた。

進化する金融ビジネスモデルに対応するデジタルマーケティング〜国内外の事例にみるビッグデータ活用術〜

日本テラデータ株式会社 プリンシパル・コンサルタント 石井 一君 氏
日本テラデータ株式会社 プリンシパル・コンサルタント 渡辺 高 氏
日本テラデータ株式会社 基調講演に続いて、B会場でもMarketingに関する5つのセッションが開かれた。まず「進化する金融ビジネスモデルに対応するデジタルマーケティング〜国内外の事例にみるビッグデータ活用術〜」と題して、日本テラデータ株式会社 プリンシパル・コンサルタント 石井一君氏と、プリンシパル・コンサルタント 渡辺高氏により報告が行われた。

まず、フィンテック企業は、金融機関の規制とコア能力の外側で利益を上げ始めていると説明。金融市場は、フィンテックの様々なデジタル技術を吸収することで、新たな顧客層を獲得しており、ビッグデータの取り込みと高度なアナリティクスにより、市場での主導権を獲得できると述べた。

次に、ビッグデータの現状について報告。ユーザーエクスペリエンスの設計には多様なデータの取込が必要であり、顧客の理解には異なるデータソースの統合が必須であること、さらに、外部で発生したイベントの統合の重要性を述べた。

続いて、ビッグデータ活用のキーとなるのが、シングル・インタラクション・ビューと、マルチジャンル・アナリティクスであると説明。

シングル・インタラクション・ビューの生成について解説し、対話(インタラクション)の標準化やデータ統合を自動化する手法とともに、マルチジャンル・アナリティクスについて説明した。

また、パターン予測と理由の分析、オムニチャネルでの顧客ジャーニー、中断した申込に対する個別アクションの実施など、パーソナライズメッセージを表示して、より多くの成約に結びつける方法を紹介。カスターマーサービスの分析や潜在顧客のジャーニーを包括的に管理する方法についても説明し、最後にデジタルマーケティングの事例を示した。

FinTech時代の新・金融マーケティング

株式会社アサツー ディ・ケイ 第1アクティベーション・プランニング本部 本部長
兼 金融カテゴリーチーム・リーダー 森永 賢治 氏
株式会社アサツー ディ・ケイ この後、「FinTech時代の新・金融マーケティング」と題して、株式会社アサツー ディ・ケイ 第1アクティベーション・プランニング本部 本部長 兼 金融カテゴリーチーム・リーダー 森永賢治氏による報告が行われた。

森永氏は、2015年は日本におけるFinTech元年の年だったとして、スタートアップ企業や商品、サービスが次々と登場し、新たな時代の幕開けになったと説明。2016年には、FinTechは“金融”からあらゆる分野へ波及し、業界を超えた「テーマ」になると指摘した。

次に、それを踏まえて、新しい金融マーケティングを5つのキーワードで解説。1つ目の「Daily relations」では、「一生つきあえる」から「毎日つきあえる」へ、オムニ・チャネルが目指す「接点頻度」がアップ。ユーザーの接点が金融機関ではなく、スマホのアプリになると述べた。ポイントとなるのは、家計や資産管理にゲームの要素を取り組むこと。楽しみながら、意図せず、関わってもらうことになると述べた。

続けて、「Behavioral Marketing」(与信は「デモグラ」から「個人の“振舞い”」へ)、「Unconscious Action」(「支払い」や「貯蓄・運用」を無意識に)、「Risk Share」(「自己責任」ではなく、「リスクもみんなでシェア」するという発想へ)というキーワードを紹介して解説。

5つ目のキーワード「EnterPayment」(「決済・支払」は「コミュニケーションの場」へ)では、LINEで友達との割り勘やお金の貸し借りを行うなど、コミュニケーション上に“決済”が乗っかるという新・発想が生まれると述べた。

アジア隣国における銀行リテールマーケティングの現在〜普及する顧客の“360°理解”とその活用〜

SAS Institute Japan 株式会社 ソリューションコンサルティング本部
カスタマーインテリジェンス グループマネージャー 羽根 俊宏 氏
SAS Institute Japan 株式会社 続いて、「アジア隣国における銀行リテールマーケティングの現在〜普及する顧客の“360°理解”とその活用〜」と題して、SAS Institute Japan 株式会社 ソリューションコンサルティング本部 カスタマーインテリジェンス グループマネージャー 羽根俊宏氏が報告した。

羽根氏は、最初に、2016年のリテールバンキングにおけるマーケット・トレンドを紹介。多くのフィンテック企業が専門特化した領域でアドバンテージを確立。従来の銀行にはない商品やサービスを展開していると報告した。

また、従来の銀行の反応として、フィンテック企業の出現により、顧客データをフル活用し、360°の顧客ビューを持つことで、デジタルバンクエコシステムにおける金融・非金融のニーズを満たすことができるという声を紹介。

続いて、中国のリテールバンキングについて報告。自由化が進む中で、「ビッグ4」の影響力が減退。株式銀行、デジタルバンク、外資系銀行の競争激化の中で、顧客に対するより利便性の高いサービス提供が課題となっていると述べた。

さらに、「営業店改革」、「ダイレクトバンキングとインクルーシブファイナンス」、「オムニチャネル戦略とチャネル改革」、「ビッグデータとアナリティクスの活用」といった顧客中心主義に向けたキートレンドを紹介。それぞれ具体的にどのようなマーケティングを行っているか説明した。

また、クローズドループでのキャンペーンマネジメントの確立や、顧客のあらゆる情報を集約した360°ビューを実現するなど、SASが手がけている先進的な取り組み事例も紹介した。

店舗チャネルの大改革〜顧客視点でのコスト効率化と営業生産性向上の両立を目指して〜

株式会社ジェネックスパートナーズ 取締役 シニア・パートナー 安田 雄彦 氏
株式会社ジェネックスパートナーズ この後、「店舗チャネルの大改革〜顧客視点でのコスト効率化と営業生産性向上の両立を目指して〜」と題して、株式会社ジェネックスパートナーズ 取締役 シニア・パートナー 安田雄彦氏が報告した。

安田氏はまず、店舗の利用状況と顧客のライフイベントと相談ニーズについて、統計資料を用いて概説。20代〜50代はアドバイスニーズと実際にアドバイスを受けている割合のギャップが大きく、解消されるのは高齢層になってからであると述べた。

次に、顧客の視点から店舗のあり方を考察。日々の接点で「エンゲージメント(つながり)」を強め、離反防止を図り、ライフイベントの感動体験で「顧客ロイヤルティ」を確立することが大切であると説明。顧客の期待を超える「感動水準」の応対が求められると述べた。

続いて、店舗チャンネルの再構築へ向けた検討の枠組みについて説明。顧客視点からの基本戦略として、誰に・何を・どうやってアプローチするか詳しく解説し、デンマークの大手銀行の事例も紹介した。

また、店舗外チャネルにシフトした機能や、外部チャネルへの拡張・呼び込みを前提に店舗機能を再定義。相談機能を強化し、ライフステージにおける複合的なニーズを引き出すことがポイントになると述べた。

店舗への呼び込みでは、顧客の行動プロセスをベースに、顧客の視点でチャネル連携における課題を洗い出し、店舗への呼び込みの確度を上げていくことの重要性を説明。最後に、店舗での応対力を高めるためには、「提案サポートツール」の導入と「スキル育成」のための「動画」の活用が有効であると述べた。

デジタルと店舗戦略を融合したこれからの金融オムニチャネル戦略

ジェネシス・ジャパン株式会社 ソリューション・コンサルティング本部
本部長 飯塚 純也 氏
ジェネシス・ジャパン株式会社 B会場の最後のセッションは、「デジタルと店舗戦略を融合したこれからの金融オムニチャネル戦略」と題して、ジェネシス・ジャパン株式会社 ソリューション・コンサルティング本部 本部長 飯塚純也氏が報告した。

最初に飯塚氏は、世界的にインストラクションの主役がデジタルへと移行し、デジタル化により金融支店網再編の動きが加速していると指摘。オムニチャネルを利用したユーザーのほうが顧客忠誠度が高く、会社とのエンゲージ度合いも高いことを説明し、オムニチャネルが、これからの金融機関の競争力の源泉になると述べた。

また、海外の事例として、決済業務をすべて自動化し、コンサルティング能力を充実させたNATIONAL AUSTRALIA BANKの新世代モデル店や、支店を持たないTANGERINE(カナダ)のTANGERINE CAFEなどを紹介した。

次に、オムニチャネル戦略を支えるジェネシス・ソリューションについて報告。オムニチャネル化のためのポイントと、オムニチャネル・ジャーニーの優先順位を決定づけるペインポイントについて解説。欧州のリテールバンク・コールフローの支店統合、WEBチャットとバーチャルアシスタントの事例を紹介した。

その後、プロアクティブ・エンゲージメントのコンセプトとその事例、ユニファイド・デスクトップのコンセプトとその事例を取り上げて説明。最後に、GENESYSのCXデザインサービスを紹介。ITとサービスの組み合わせによるソリューションを提供していることをアピールした。

欧米におけるリスク管理の最新動向〜ストレステスト、FRTB、BCBS239、IFRS9への対応〜

SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング本部
リスクインテリジェンスグループ 部長 柳 洋二郎 氏
SAS Institute Japan株式会社 基調講演に続いてC会場では、Risk Managementに関する4 つのセッションが行われた。まず、「欧米におけるリスク管理の最新動向〜ストレステスト、FRTB、BCBS239、IFRS9への対応〜」と題して、SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング本部 リスクインテリジェンスグループ 部長 柳 洋二郎 氏が報告した。

柳氏はまず、規制の傾向とシステム化の考え方に確認した後、FRTB(MCRM)の課題と海外動向について説明。

内部方式を認められない場合、必要資本額は40〜50%増しなると思われること、標準的方式はシステムの作り直し、信用リスク部分は追加構築といった影響を指摘。海外で検討されているシステムイメージや検討状況についても説明した。

次に、ストレステストの考え方と流れを説明。ストレステストの要件と課題、システム機能について、データ管理、モデルの開発、ストレステストの実行、統合/レポート作成の項目毎に説明。海外の事例も紹介した。続いて、IFRS9(減損規定)とBCBS239について、それぞれの要件と主な課題、システム要件を図示し、海外の事例も紹介した。

最後に、規制の傾向とシステム化の考え方について確認した後、SASの推薦するアーキテクチャーを紹介した。

金融イノベーションの潮流における価値創出のためのITガバナンス

有限責任監査法人 トーマツ 金融インダストリーグループ シニアマネジャー
稲葉 裕一 氏
有限責任監査法人 トーマツ 続いて、有限責任監査法人 トーマツ 金融インダストリーグループ シニアマネジャー 稲葉裕一氏が「金融イノベーションの潮流における価値創出のためのITガバナンス」と題して報告した。

最初に稲葉氏は、これまで金融機関にはITリスク管理といった守りの姿勢が求められていたが、環境変化を踏まえ、ステークホルダーへの価値を創出する攻めのITガバナンスへの変化が重要になっていると説明。金融イノベーションは、いまや世界経済における重要なテーマだと述べた。

次に、攻めのITガバナンスのフレームワークであるCOBIT 5を紹介。COBIT5では、CIOの視点からCEOの視点へとスコープが進化。プロセスや組織、システム、人材を中心に、原則、文化、情報を含めた7つのイネーブラー(ITガバナンスとITマネジメントの機能に影響を及ぼす要因)により多面的な観点から、実効性のある全社的ITガバナンス態勢を構築できると説明した。

続いて、トーマツが提唱する事業体ITガバナンスモデルを紹介。ステークホルダーニーズに基づき、受託者責任と説明責任を遂行し、ガバナンスプロセスを通してイネーブラーを確立。イノベーションをガバナンスに組み込んで持続的な変革を実現すると説明した。

最後に、価値創出のための管理プロセスを高度化し、イノベーションを担う組織を社内に作って外部組織と連携するという組織構造イネーブラーの確立例について説明。価値創出の組織文化を醸成できることにも触れた。

サイバー・インテリジェンスとSIEMを活用した最新分析

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 シニアマネジャー 佐藤 功陛 氏
デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 この後、「サイバー・インテリジェンスとSIEMを活用した最新分析」と題して、デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 シニアマネジャー 佐藤功陛氏が報告した。

佐藤氏はまず、日本におけるセキュリティ監視の実体と課題を例示。監視対象がインターネットの境界デバイス中心や、分析の「主キー」がIPアドレスのみの場合、複数の委託先を利用している場合などに分けて、課題と対策を示した。

次に、サイバー・インテリジェンスの定義とその手法を説明。定義は複数存在するが、この講演の定義では、「発見」については「サイバー攻撃をコンテキスト(文脈)の中で解釈し、リスクを評価するために必要な情報」であるとし、情報とサイバー・インテリジェンスの違いを解説。「発見」におけるサイバー・インテリジェンスについて説明した。

続いて、「発見」から「予防」「回復」までの領域を全方位でカバーする、デロイトのサイバー・インテリジェンス・サービスを紹介。今年5月に開所した、CIC(サイバー・インテリジェンス・センター)の特長についても説明した。

さらに、各ユーザーに特化したスレット・インテリジェンス・アナリティクス(TIA)の特長、24時間365日の脅威分析サービスを行うスレット・セキュリティ・モニタリング(TSM)の特長を紹介。最後に、エンドポイント対策に主眼を置いた、新しいサービスの特色についても紹介した。

データマネジメント態勢評価の枠組み〜MIS高度化に向けた情報アーキテクチャー等の評価〜

NSフィナンシャルマネジメントコンサルティング株式会社 執行役員 田幡 和寿 氏
NSフィナンシャルマネジメントコンサルティング株式会社 続いて、NSフィナンシャルマネジメントコンサルティング株式会社 執行役員 田幡和寿氏が「データマネジメント態勢評価の枠組み〜MIS高度化に向けた情報アーキテクチャー等の評価〜」と題して報告した。

田幡氏はまず、MIS(経営経営情報システム)構築に関わる論点を整理。海外事例のヒアリングから示唆されることを提示。MISガバナンス体制、連結管理の基本的考え方、財務会計・管理会計の取扱方針などの項目毎に、ヒアリング結果と、同社の考察を加えた。

MIS構築の方向性として、グローバルかつ連結ベースでの統一的データ集計ができ、機動的なセグメント分析が可能なデータベース構築であり、財務データ主体で共通フォーマット化が進むこと、そして、グローバルかつ連結ベースのデータの品質を維持するための組織的対応が必要になると述べた。

次に、データ・マネジメント態勢の評価モデルや、態勢評価の意義、活用状況などを説明。データ・マネジメント態勢評価モデルの主な8つのカテゴリーとその概要を示した。

最後に、情報アーキテクチャーの評価の視点について説明。データ・アーキテクチャーとテクノロジー・アーキテクチャー、それぞれの定義や目的、概要を解説。評価項目と高度化の方向性を示した。

FinTechの衝撃〜金融イノベーションを勝ち抜くための条件〜

アクセンチュア株式会社 金融サービス本部
マネジング・ディレクター 銀行グループ統括 宮良 浩二 氏
アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター 村上 隆文 氏
アクセンチュア株式会社 基調講演の後、D会場では、Solutionについて4 つのセッションが行われた。最初に、「FinTechの衝撃〜金融イノベーションを勝ち抜くための条件〜」と題して、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 マネジング・ディレクター 銀行グループ統括 宮良浩二氏と、戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 村上隆文氏が報告した。

まずは、宮良氏が、金融機関のイノベーション期待や投資余力回復を背景に、加速度的にFinTech投資が増加。決済・貸付分野が先行したFinTechは、より複雑な金融プロダクトもカバーしつつあるという現状を説明。

FinTechは、アンバンドル(金融代替サービス提供)、リバンドル(業際の再定義<エコシステム>)、エンハンス(利便性向上)という3つのインパクトをもたらすと説明。銀行収益が脅かされ、非金融企業による金融一体型サービスが定着、金融インフラからの構造転換を招くと述べた。

続いて村上氏が、ブロックチェーンについて解説。ブロックチェーンはP2P技術を用いた分散化型台帳技術であり、セキュアで効率的、書換不可能なリアルタイムトランザクション処理の実現が可能であること、仮想通貨や決済だけでなく、様々な分野への適用が期待されていると述べた。

これに対して伝統的金融機関は、社会インフラ企業か、顧客サービス企業か、いずれかの機能を磨き上げることが求められていると指摘。自らの方向性を踏まえ、ICTやFinTechをどのように活用するかが重要になると述べ、イノベーションの事例を紹介した。

最後に、イノベーション創出には3つのタイプと成功要件があり、イノベーション体質を構成する6つの要素をどう担保するかを決める必要があると述べた。

IoTで変わる消費者行動とあるべき金融サービス像

株式会社NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター シニアマネージャー
河原 陽一 氏
株式会社NTTデータ経営研究所 続いて、「IoTで変わる消費者行動とあるべき金融サービス像」と題して、株式会社NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター シニアマネージャー 河原陽一氏が報告した。

河原氏はまず、身近なIoT製品やデジタルとアナログを繋ぐサービスの例を紹介。IFTTT(IF THIS THEN THAT)の仕組みを使って、個人でも好きな商品を作れると述べた。

次に、モノ・コトがしゃべる、モノ・コトがつながる、データが残るといったIoTの機能に注目。企業は商品・サービスコンセプトを生活者に正しく伝達でき、生活者はつなげたいモノ・コトを自分の好きにチューニングできること、企業はどんな商品・サービスがどのように使われているかを把握できると説明した。

続いて、消費者購買行動にIoTが与えるインパクトについて考察。消費行動モデルが変化し、モノ・コトが自律的なソフトウェアバージョンアップをすることで、商品・サービスの魅力を生活者に伝え、モノ・コトが新商品やつながるサービスを生活者に示すことで、新たな商品・サービスの興味を惹くと述べた。

次に、IoT時代の商品・チャネル戦略について言及。購買意欲とお金に合わせた「売り方」があるとして、カギになるのは生活者のプロファイルの取得だと指摘した。

最後に、IoT時代のサービス開発に必要なのは、あらゆるモノ・コトをつなげる、モノ・コトがしゃべるという発想だと説明。「IoTアイデアソン」のイメージをイラストで紹介した。

保険会社でデジタルの取り組みが上手く進まない5つの理由〜海外の成功要因に学ぶ〜

アクセンチュア株式会社 金融サービス本部
保険グループ マネジング・ディレクター 大窪 章敬 氏
アクセンチュア株式会社 金融サービス本部
ディストリビューション&マーケティング マネージャー 久保 千明 氏
アクセンチュア株式会社 続いて、「保険会社でデジタルの取り組みが上手く進まない5つの理由〜海外の成功要因に学ぶ〜」と題して、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 保険グループ マネジング・ディレクター 大窪章敬氏と、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 ディストリビューション&マーケティング マネージャー 久保千明氏が講演した。

はじめに、保険業界を取り巻く環境変化について、従来のビジネスモデルの全体が崩れつつある中で、次なる一手を模索するタイミングが到来したと説明。

次に、グローバル414社の保険会社のエグゼクティブを対象に実施した調査から、日本の保険会社が注目すべき3つの重要なトレンド――「デジタル化の加速」、「保険会社・代理店の役割の再定義」、「イノベーションの期待から実現へ」について説明した。

続いて、保険会社がとるべき3つのアクションを紹介。第1は「フロント領域のデジタル化は次のステージへ」として、次の投資先は、顧客高度を予測した営業生産性の劇的な向上にあると解説。

第2に「保険業界の垣根を越えたオープンイノベーションの活用」が求められ、第3に「真の顧客志向を実現するためのデジタルビジネスの再構築」が必要であると述べた。

最後に、乗り越えるべき5つの壁を紹介。「リーダーは非連続な改革を実施するマインドセット持つ」、「現業部門と切り離したイノベーションチームをつくる」、「信じられる外部企業と提携し、とことん活用する」、「イノベーション投資枠を通常枠と別途、確保する」、「自社で考え抜くのいではなく、顧客にクィックに問い続ける」ことだと述べた。

FinTech・仮想通貨・決済インフラ改革

帝京大学経済学部教授 慶應義塾大学経済学部非常勤講師
経済学博士 宿輪 純一 氏
帝京大学経済学部教授 D会場の最後のセッションでは、「FinTech・仮想通貨・決済インフラ改革」と題して、帝京大学経済学部教授 慶應義塾大学経済学部非常勤講師 経済学博士 宿輪 純一 氏が報告した。

宿輪氏は、まず海外の代表的なFinTech分野について、(1)金融サービス(Neo Bank)、決済・送金、資産運用・預金管理、融資、(2)付加価値サービス、消費者・小企業支援、セキュリティ、(3)仮想通貨・ブロックチェーンなどがあるが、もともとは決済・送金サービスからスタートしたと言ってもよいと説明。

また、FinTechは15年以上前から活動しており、有名なPayPalは1998年、Alipayは2005年、M-Pesaは2010年、Bitcoinは2009年に活動をスタートするなど意外と歴史があると指摘。主に個人向けサービスやEC・決済サービスを行い、電子マネーや仮想通貨を利用することが多く、ブロックチェーン技術を使うのも特徴だと述べた。

次に、日本では決済インフラ改革が進んでいる中で、FinTechmの現状を紹介。主に個人をターゲットに金融サービス(決済・送金、資産運用・予算管理[ロボアドバイザー、簡便化])、資産管理、融資、クラウドファンディングなどのほか、付加価値サービスでは、消費者・小企業支援(会計管理ソフト)、セキュリティ(生体認証、不正探知)などの分野で活躍していると述べた。

最後に、FinTech・仮想通貨の課題と将来について解説。決済・送金サービスについては、消費税が足かせとなるかもしれず、仮想通貨についてはマスコミが話題にするほど活用が進むかどうかは疑問であると述べ、課題は付加価値サービスをいかに強化するかであると述べた。
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