2015年5月22日(金)、株式会社セミナーインフォ主催により、東京・千代田区のベルサール神田で「金融フォーラム2015」が開催された。今回で4回目を迎えるこのフォーラムは、金融機関を対象に、業界を取り巻く環境の変化や規制の動向、成熟市場を生き抜くためのイノベーション等に関する付加価値の高い情報を提供するためのイベントである。
今回は、「〜新たな規制への対応とマーケティング&IT革新〜」を統一テーマに、全21セッションが開かれた。参加エントリー総数は3千3百件にのぼった。
フォーラムでは、まず基調講演として、金融庁監督局審議官の西田直樹氏が登壇。「地域金融機関に期待される役割」と題して、地域経済活性化支援機構の機能や取組み状況、経営者保証に関するガイドラインの策定の背景・目的及び概要などについて解説。その後、セミナー会場A・B・C・Dにおいて、Regulation、Marketing、Risk Management、Governanceの4テーマについて、20のセッションが行われた。
【基調講演】
地域金融機関に期待される役割
金融庁 監督局 審議官 西田 直樹 氏
当日、「地域金融機関に期待される役割」と題して、金融庁監督局審議官 西田直樹氏が基調講演を行なった。
西田氏は、まず「『日本再興戦略』改訂2014」において、地域活性化・地域構造改革の実現等のために新たに講ずべき具体的施策として、「地域金融機関による事業性を評価する融資の促進」について触れた後、「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」の概要を説明。
顧客ニーズに応える経営など9つの重点施策を示し、地域金融機関に対して、企業の事業性評価と解決策の提案・実行の支援、特に事業性評価を重視した融資やコンサルティング機能を発揮することが課題となっていることを述べた。
次に、昨年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げられた施策について説明。
金融等による「地域企業応援パッケージ」を策定し、産業・金融両面からの政府の支援等を総合的に実施し、様々なライフステージにある企業の課題解決に向けた自主的な取組を官民一体で支援すること、また、埋もれている地域資源を活用した事業化の促進など金融庁関連の施策について紹介した。
また、「地域経済活性化支援機構」による地域金融機関等と連携した取組を紹介。「経営者保証に関するガイドライン」を策定した背景や目的、概要を説明。監督指針の改正のポイントについても説明した。
最後に、金融機関等により広く実践されることが望ましい事例集を公表しており、ガイドラインが融資慣行として浸透・定着していくことを期待していると述べた。
インフラ・エネルギーファイナンス法務の最先端
長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 本田 圭 氏
長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 勝山 輝一 氏
基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。A会場ではRegulationをテーマに5つのセッションが開かれた。まず「インフラ・エネルギーファイナンス法務の最先端」と題して、長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 本田圭氏、パートナー弁護士 勝山輝一氏が報告した。
まずは、空港、上下水道、有料道路等などのインフラファイナンスの現状及び留意点について解説。コンセッション型PFIの概要や基本ストラクチャー、公共施設等運営権について説明し、コンセッションの対象となる施設を紹介した。
また、具体的な事案として空港を例に、入口(業務開始時)と業務期間中、出口(業務終了時)の問題点について検討した。
次に、エネルギーファイナンスの最新の法的論点について解説。火力発電プロジェクトのスキームを紹介した後、そのプロジェクト関連契約について、売買契約のオフテイクリスク、PPAの留意点、IPP入札案件標準契約について留意点を説明した。
また、EPC契約とO&M契約、燃料供給契約のリスクや留意点についても紹介した。また、ファイナンス関連契約の留意点やセキュリティパッケージについても説明した。
最後に、再生可能エネルギー発電プロジェクトにおける留意点について解説。再生エネルギー全量買取制度の概要や調達価格の決定時期、設備認定に係わる最近の変更、出力抑制ルールの変更内容について説明。
また、活性化が見込まれる上場インフラファンドに触れた後、既存再生エネルギー案件買取の留意点として、再生エネルギー案件DD(デューディリジェンス)のポイント、設備認定及び系統連携、事業用地の確保(地上権とすべきか、賃借権とすべきか)、土地賃貸借経営のポイントや屋根置き事業の留意点を説明。DDの際の関連法政の確認やミニアセス問題についても説明した。
改正犯収法を踏まえた金融機関に求められる
態勢整備上の留意点
弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 國吉 雅男 氏
A会場では続いて、「改正犯収法を踏まえた金融機関に求められる態勢整備上の留意点」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 國吉雅男氏が報告した。
國吉氏は、まず「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会」が設置されるに至った経緯・背景について説明。犯収法を巡る最近の重要なトピックスを押さえた後、我が国はFATF(金融活動作業部会)勧告遵守の取組について最も遅れた国の一つであることを指摘した。
次に、「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会」において議論された10の論点と改正犯収法の内容を解説。
まずは、(1)関連する複数の取引が敷居値を超える場合の取扱いと、取引時確認に関して、(2)写真なし証明書の取扱い、(3)取引担当者への権限の委任の確認、(4)法人の実質的支配者、(5)PEPs(外国の重要な公的地位にある者)の取扱いについて、それぞれ懇談会報告書の提言内容を紹介。
続いて、(6)継続的な取引における顧客管理、(7)リスクの高い取引の取扱い、(8)リスクの低い取引の取扱い、(9)既存顧客について解説。
最後に、マネー・ローンダリング対策としての(10)リスクベース・アプローチは、他のコンプライアンス分野や信用リスク等のあらゆるリスクについて応用できることを説明。
また、顧客管理に係わる4つの視点として、マイナンバー制度の更なる活用、適時・適切な情報収集、情報の有効活用、再委託先・再々委託先の情報管理の徹底など、高度化に必要な態勢整備について解説した。
バーゼル規制・標準的手法の見直しと資本フロア〜リスク管理の高度化と規制対応の狭間における実務上の課題〜
有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ シニアマネジャー 浅井 太郎 氏
続いて、「バーゼル規制・標準的手法の見直しと資本フロア〜リスク管理の高度化と規制対応の狭間における実務上の課題〜」と題して、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ シニアマネジャー 浅井太郎氏が報告した。
浅井氏は、バーゼル銀行監督委員会が2014年12月22日に公表した信用リスクの標準的手法の見直し等に関する市中協議案について説明。市中協議案ではフロアの水準及び適法方法は示されていないこと、信用リスクの標準的手法はコンセプトを変える変更となっていることを紹介した。
さらに、オペレーショナルリスクの2つの標準的手法(基礎的手法、粗利益配分手法)を一本化し、その計算要素(代理指標と掛け目)を見直した案が提案されていると説明。コンセプトは維持しながらも、枠組みとしては大幅な変更となっていると述べた。
次に、バーゼル委員会が内部モデルの整合性の調査を実施していることを紹介。リスク感応度、簡素さ及び比較可能性のバランスが議論されており、内部モデルの使用範囲を制限する方向性が示されていると述べ、フロアの目的としてモデルリスクの低減等が挙げられていると説明した。
続いて、フロアの導入や標準的手法の見直しに伴うリスク管理の実務への影響を説明。標準的手法からの高度化のメリットは、フロアの水準次第であり、適用方法によって影響は異なることが想定されると述べた。
最後のまとめとして、フロアを巡る詳細な枠組みは未決定であり、影響は不透明であると説明。SAの見直しやフロアの導入以外にも、多くの規制の見直しが予定されており、適切に対応することが必要だと指摘した。
地域金融機関による取引先海外進出支援の方策〜共同駐在員事務所の可能性も含めて〜
岩田合同法律事務所 弁護士 松田 貴男 氏
岩田合同法律事務所 弁護士 工藤 良平 氏
続いて、「地域金融機関による取引先海外進出支援の方策〜共同駐在員事務所の可能性も含めて〜」と題して、岩田合同法律事務所 弁護士 松田貴男氏、弁護士 工藤良平氏が報告した。
まず、海外進出を行う取引先に対する融資現場での実例を紹介しながら、取引機会損失の観点と既存の与信先に対する債権管理・リスク管理の観点から問題点を指摘。海外進出を行う取引先に対する金融面・情報面等でのサービス提供の方策について、海外現地に拠点を設けなくとも可能な方策と、海外現地に拠点(支店・駐在事務所)を設立して行う方法を挙げた。
海外現地に拠点を設けなくても可能な方策として、取引先の海外子会社への直接貸付、海外現地銀行との業務提携、政府系金融機関・メガバンクとの連携について説明。海外向け直接貸付の留意点について、英文貸付契約自体に対する不慣れや、現地強行法規の確認は不可欠といった留意点を上げた。
また、海外現地に拠点を設立する際、支店・現地法人設立の場合と駐在員事務所設立の場合のそれぞれの注意点についても解説した。
最後に、第3の方法として、複数金融機関が共同で拠点(駐在員事務所)を設立する方法について、いくつかのスキームを紹介。
現実的に利用可能性・実現可能性があるスキームとして、海外に一つの金融機関が代表として駐在員事務所を設立の上、他の金融機関は従業員を出向させる形で海外現地の駐在員事務所に派遣する方法と、海外に各行が駐在員事務所を設立の上、近接した区画にオフィスを賃借し、事務サービス等に係わる費用負担をシェアする方法について、それぞれのメリットと注意点を述べた。
アジアにおける金融規制とその最新動向
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 花水 康 氏
A会場の最後のセッションでは、「アジアにおける金融規制とその最新動向」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 花水康氏が報告した。
花水氏は、まずインドネシアのオフショアローンに対する規制の動向について説明。今年1月1日に施行されたインドネシア中央銀行(BI)による新規制により、実務が大きな影響を受けていることを報告。ヘッジ比率規制、流動性比率規制、格付規制の内容がどのようなものかを説明した。
次に、インドネシアの銀行法について、外貨規制を強化することを内容とする改正が行われる見込みであり、銀行に対する外国株主の出資比率を40%に制限するキャップを設定することなどが予定されていると述べた。
続けて、フィリピンの銀行法改正について説明。外国銀行が国内銀行の議決権の100%を保有することが認められるようになったこと、フルバンキング・ライセンスを保有する支店を開設できる外国銀行の数に関する制限が撤廃されることなどを紹介した。
また、ベトナムの銀行やノンバンクに係わる外資規制の緩和について言及。最後に、インドのECB規制の緩和についても説明し、運転資金を資金使途とするECBは政府承認ルートとされていたが、自動承認ルートに変更されたことなどを紹介した。
金融維新を勝ち抜くために〜開国(異業種との競争・協調)と文明開化(デジタライゼーション)〜
アクセンチュア株式会社 金融サービス本部
アクセンチュア ディストリビューション&マーケティング サービス統括
マネジング・ディレクター 木原 久明 氏
基調講演に続いて、B会場でもMarketingに関する5つのセッションが開かれた。まず「金融維新を勝ち抜くために〜開国(異業種との競争・協調)と文明開化(デジタライゼーション)〜」と題して、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 アクセンチュア ディストリビューション&マーケティング サービス統括 マネジング・ディレクター 木原久明氏により報告が行われた。
木原氏は、まず金融業界はまさに「維新」の時代を迎えていると説明。新たな脅威として異業種による金融業参入という「黒船」が参入し、いつでもどこでも使えるデジタルデバイスによって、消費者は「自ら求める体験」の実現を望み始めていると述べた。
次に、同社が考える次世代金融サービスをイメージ動画で紹介。これからの金融機関が顧客に提供すべき価値として、『「モノ」「コト」から「体験」へ』、『「個別企業での戦い」から「コンバージェンス」「エコシステム」へ』など4点を提示。銀行業・保険業・証券業におけるトランスフォーメーション例を紹介した後、同社が考える顧客の年代毎の次世代金融サービスを示した。
さらに、「真の列強」となるために、金融エコシステム構想における5つの戦略的ポジショニングを説明。それぞれの目指す「ねらい」と「成功の要諦」を述べた。
最後に、各金融機関がエコシステム構想において覇権争いに勝利するためには、テクノロジーを武器とすることが必要であり、これまでと異なるプログラム推進が求められると述べた。また、最新のテクノロジー・スタートアップ動向を常にアップデートできるかも重要な要素であり、イノベーションを創出するためのカルチャー面の改革も必要になると指摘した。
データ・マーケティングと現場を動かす
動画活用マネジメント
株式会社ジェネックスパートナーズ 取締役 シニア・パートナー 安田 雄彦 氏
株式会社ジェネックスソリューションズ 代表取締役 高橋 勇人 氏
この後、「データ・マーケティングと現場を動かす動画活用マネジメント」と題して、株式会社ジェネックスパートナーズ 取締役 シニア・パートナー 安田雄彦氏と、株式会社ジェネックスソリューションズ 代表取締役 高橋勇人氏による報告が行われた。
まずは、安田氏がデータ・マーケティングの意義を説明。収益性の向上に向けて、マス顧客に対してもデータ分析を活用して取引の親密化を図ることが重要であると述べた。
また、最初から大掛かりなシステム投資や仕組み構築をするより、効果の高そうな対象に絞り込み、小さくやれるところから始める「スモールスタート」方式が現実的で効果的であると説明。
次に、データ・マーケティング態勢構築について、@目的の明確化・方針策定、Aデータの収集・整備、Bデータの分析、C実践(PDCAサイクル)について検討のポイントを詳しく解説した。
続いて高橋氏が、現場を動かす動画活用マネジメントについて説明。短尺動画を用いたコミュニケーションシステム(ClipLine)を構築することで、「現場の生み出す知恵」を組織力強化に生かすことができると述べ、ClipLineのコンセプトやClipの種類と活用法、「ノウハウ」が蓄積される仕組みを解説した。
最後に、ClipLineという新しいプラットフォームを導入することで、企業はサービスマネジメント、企業内コミュニケーション、教育のやり方を大幅に革新できることを強調した。
金融オムニチャネルマーケティングへのチャレンジ〜銀行業における先進事例を踏まえて〜
SAS Institute Japan 株式会社 ソリューションコンサルティング第一本部
CIグループ マネージャー 羽根 俊宏 氏
続いて、「金融オムニチャネルマーケティングへのチャレンジ〜銀行業における先進事例を踏まえて〜」と題して、SAS Institute Japan 株式会社 ソリューションコンサルティング第一本部 CIグループ マネージャー 羽根俊宏氏が報告した。
羽根氏は、最初に、変容するリテールバンキングについて説明。Bank3.0の世界は「顧客が主役」となるものであり、変容する顧客への対応もBank3.0の文脈で考える必要があると述べた。
また、オンラインバンキングの利用が急激に普及する傾向にあり、デジタルチャネルで完結する顧客や、ネットチャネルと従来のリアルチャネルを往来する顧客が増えていることをデータで示した。
一方で、「今そこにいる顧客に必要なものを提案できていない」「チャネルで知らない間に顧客が流出している」といった課題も指摘。オムニチャネルにより、完全に統合された顧客のシングルビューと、それを活用する戦略的オペレーションが可能になると説明した。
次に、先進企業事例として、外国銀行のオムニチャネルマーケティングを紹介。すべてのチャネルを総動員・連携して顧客を囲い込んで、きめ細かく把握し、「先読み」するための情報を各チャネルが共有していることを説明。オムニチャネルは、目標達成に向けて、適切な顧客を適切なチャネル間回遊ルートで“リード”するための手段であると述べた。
最後に、リアルタイムマーケティングを実現したSASのテクノロジーを紹介。モバイルバンキングアプリのログインから振込操作、取引後のオファー、店舗の担当営業との面会予約から、タブレットを使った提案などの実現例を示した。
新しい顧客チャネル戦略とその分析方法〜国内海外事例を交えて〜
シスコシステムズ合同会社 エンタープライズ事業 金融担当部長 田上 貴章 氏
この後、「新しい顧客チャネル戦略とその分析方法〜国内海外事例を交えて〜」と題して、シスコシステムズ合同会社 エンタープライズ事業 金融担当部長 田上貴章氏が報告した。
田上氏はまず、消費者の大多数がパーソナライズされた金融サービスを要望しているというアンケート結果を紹介。誰に「どう商品を紹介するか」と「どんな商品を紹介するか」という対比とバランスから差別化が生まれると指摘した。
次に、優良顧客、準優良顧客、イベントのある顧客、一般顧客など顧客セグメントごとのチャンネル戦略について国内外の4つの先進事例を取り上げ、それぞれいかに能動的な市場開拓力を発揮しているかを解説した。
また、4つの先進事例に共通しているビデオ活用について言及。社内コミュニケーションから顧客サービスへと活用を広げている銀行の例を取り上げ、シスコシステムズ合同会社が提供しているチャネル連携も紹介した。
続いて、チャネル戦略やセグメント分析をする上で必要となる社内データの分析方法を紹介。新しい仮想的なデータ統合によりリアルタイムにデータ分析ができ、費用も削減、最新情報を入手できるといったメリットを説明し、最後にシスコシステムズ合同会社の仮想化プラットフォームを紹介した。
顧客ロイヤルティの向上がなぜ、
金融機関における“鍵”となるのか?〜欧米の実例でみるNPS®
の活用と秘訣〜
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
ビジネスインテリジェンス本部 シニアコンサルタント 光安 史枝 氏
B会場の最後のセッションは、「顧客ロイヤルティの向上がなぜ、金融機関における“鍵”となるのか?〜欧米の実例でみるNPS
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の活用と秘訣〜」と題して、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 ビジネスインテリジェンス本部 シニアコンサルタント 光安史枝氏が報告した。
最初に光安氏は、顧客ロイヤリティの新指標であるNPS
®
=Net Promoter Scoreを紹介。企業の成長率や収益性との相関が高いことや、ロイヤルティ向上につながる最優先課題を特定できるといった、6つの特徴を紹介し、金融業界でも導入する企業が多いと述べた。
次に、顧客ロイヤルティ向上が金融機関にもたらす経済的な価値について説明。NPS
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が高い銀行は預金残高の成長率も高い傾向にあることや、NPSリーダーとラガードの成長率とNPS
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との関係性について解説した。
続いて、欧米金融機関での活用事例を紹介。2010年頃からNPS
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プログラムを本格導入したCitybankでは、リテール分野において顧客満足度が上昇していることや、HSBC銀行では、市場セグメンテーションやプロダクト設計にNPS
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を活用し、顧客の声を組み込んだプロダクト設計によりNPS
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が20ポイント向上した事例について説明。保険業界・証券業界・クレジット業界の活用事例も紹介した。
最後にNTTコムオンラインのNPS
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ソリューションを紹介。顧客マーケティングクラウド「Satmetrix Pro」を活用したNPS導入のステップを示した。
経営情報システム(MIS)による
収益・リスク・財務の統合管理〜データ・ガバナンスと経営判断に必要な高度・高速シミュレーション〜
NSフィナンシャルマネジメントコンサルティング株式会社 執行役員 田幡 和寿 氏
基調講演に続いてC会場では、Risk Managementに関する5 つのセッションが行われた。まず、「経営情報システム(MIS)による収益・リスク・財務の統合管理〜データ・ガバナンスと経営判断に必要な高度・高速シミュレーション〜」と題して、NSフィナンシャルマネジメントコンサルティング株式会社 執行役員 田幡和寿氏が報告した。
田幡氏は、まず経営の意思決定に用いるMIS(Management Information System)の構築は、大手金融機関にとって喫緊の経営課題であると述べ、MIS統合データベースの構築とMIS運営態勢(ガバナンス)が、今後の業務運営の有効性と効率性(IT投資の効果)を決定すると説明した。
次に、MIS高度化の論点について検討。2010年12月のSSG報告書で示された2つの方向性(ガバナンス・インフラ)、2014年7月の金融モニタリングレポートにおける議論を紹介し、国内と海外の大手金融機関の論点を整理。欧米金融機関の事例からMIS整備状況のチェックポイントや当局検査指摘事項などの課題について説明した。
続いて、MIS高度化の方向性と課題について解説。外資系金融機関を参考としたシステム・データガバナンス体制のイメージと、データガバナンス態勢の方向性を示し、MISに求められる主な機能としてデータ集計、シミュレーション、モニタリング指標計測を挙げた。
最後に、金融機関内部におけるMIS高度化プロジェクトの進め方の概要を提示した。
リスクとファイナンスの統合〜海外事例にみる統合体制と規制対応コストの削減効果〜
プライスウォーターハウスクーパース株式会社 金融サービス事業部
ディレクター 押谷 茂典 氏
マネージャー 秋山 潤一郎 氏
続いて、プライスウォーターハウスクーパース株式会社 金融サービス事業部 ディレクター 押谷茂典氏と、マネージャー 秋山潤一郎氏が「リスクとファイナンスの統合〜海外事例にみる統合体制と規制対応コストの削減効果〜」と題して報告した。
まず、リスク管理部門と財務管理部門に求められる期待について説明。システムと統制における脆弱性の対応と、さらなる規制要件の実施といった多大なプレッシャーがある中、構造的な非効率性と重複を解消することが求められていると指摘。リスク管理部門と財務管理部門の統合における主要なテーマと、期待される効果について解説した。
次に、海外金融機関におけるリスク管理と財務管理統合の取組みを紹介。データ管理の強化がトレンドとなっており、データ整備にとどまらず、ガバナンス態勢構築と報告業務に係わる作業効率化を実現する施策として、重要な役割を担っていると述べた。
続いて、リスク管理と財務管理統合に向けたアプローチについて説明。統合に向けたデータ課題への取組みや方向性について解説し、統合アプローチして2つの方法があることを提示し、データマネジメントが重要であると述べた。
最後に、より実践的なアプローチは、データの正確性を高める仕組みを解決策の中心に据えることであることを強調した。
進化する金融系サイバー犯罪の手口と
最新事例から学ぶ対策のフレームワーク
株式会社カスペルスキー 専務執行役員 宮橋 一郎 氏
この後、「進化する金融系サイバー犯罪の手口と最新事例から学ぶ対策のフレームワーク」と題して、株式会社カスペルスキー 専務執行役員 宮橋一郎氏が報告した。
宮橋氏は、まず株式会社カスペルスキーが、サイバーセキュリティに対するグローバルな貢献をしてきたことや、法執行機関と深く連携して活動していることを紹介。次に、2014年のサイバー犯罪の動向について、世界的に標的型攻撃が活発化していると述べた。
続けて、2015年のサイバー脅威の予測について、サイバー犯罪とAPT(Advanced Persistent Threat)の融合、APTグループの分裂と攻撃の多様化などが考えられると説明。2015年2月に発表された“CarBanak APT”サイバー銀行強盗の概要を紹介し、100の金融団体や30カ国で300以上のIPアドレスが攻撃されたこと、攻撃はより組織的で標的型に変化しており、攻撃者はセクターを越えてスキルと役割の分化を進め、犯罪のエコシステムが成立していると指摘した。
次に、対策のフレームワークについて説明。そのプロセスから内部統制との一体化までを示し、APT最大のリスクは、人と端末の脆弱性であること、従業員や取引先の教育に終わりはなく、お客様のセキュリティ意識も永遠のテーマであることを述べた。
最後に、同社が提供できるテクノロジーと実績を紹介。情報セキュリティはリスクマネジメントの柱として必須であるだけでなく、事業の成功を支える礎石の一つであると述べた。
リスクカルチャー〜内部監査の視点から〜
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター 森内 祐輔 氏
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 シニアマネージャー 廣田 貴寛 氏
続いて、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター 森内祐輔氏と、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 シニアマネージャー 廣田貴寛氏が「リスクカルチャー〜内部監査の視点から〜」と題して報告した。
まず、森内氏がリスクカルチャーの目的について、リスクガバナンス・フレームワークにおける3つの重大ポイントの関連性と、内部メカニズムの必要性を明確化することであると説明。金融危機の根本原因は、リスクアペタイトとリスクカルチャーの欠落にあると指摘した。
次に、リスクカルチャーの現状に言及。リスクカルチャー高度化への段階的な取組みや、健全なリスクカルチャーを指し示す4つの指標と、健全なリスクカルチャーを支える基盤として、効果的なリスクガバナンスと、リスクアペタイト・フレームワークについて説明した。
続いて、廣田氏がリスクアペタイトの定義を確認し、リスクデータアグリケーションの重要性について説明した。その後、内部監査の視点からリスクカルチャーの対応について解説。リスク管理プロセスにおける第一線・第二線・第三線の責任を明確化することが大切であると述べた。
次に、リスクカルチャーにおける内部監査の役割と責任を提示し、重要なのは組織として一貫性を保つことであると指摘。リスクカルチャーを通常監査に統合する手法を紹介した。
最後に、リスクカルチャーを統合したリスク評価について説明。検討課題や体系的なインタビューの質問例、文書申請のリスト例、内部監査報告書の作成手順などを紹介した。
リスクアペタイト・フレームワークの構築〜リスクを積極的にとるためのリスク管理の実践〜
有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター センター長 パートナー 大山 剛 氏
C会場の最後のセッションでは、「リスクアペタイト・フレームワークの構築〜リスクを積極的にとるためのリスク管理の実践〜」と題して、有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター センター長 パートナー 大山剛氏が報告した。
大山氏は、まず「リスクアペタイト(RA)とは何か」を分かりやすく説明。リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)やリスク・キャパシティ(RC)、リスク・リミット(RL)、リスクアペタイト・ステートメント(RAS)についても丁寧に解説した。
次に、リスクアペタイトを押さえる要因と促す要因についてイメージ図により説明。2つの綱引きの中でリスクアペタイトは決められると述べた。また、経営陣に質すべき9つの質問内容も紹介。経営者が自分の言葉で語れることが重要だと述べた。
続いて、RAFを構築するための10のステップを紹介。重要なのはガバナンスとリスク計測・制御体制の確立であると述べ、RADにおけるリスクのとらえ方の特徴も説明した。
さらに、多様な視点からのリスクの取り込みの事例を表で紹介。経営戦略に係わるリスクをどのようにすれば的確に認識できるかを説明した後、RAF構築の難しさについても整理した。
最後に、リスクを積極的にとるという視点からRAFの活用をイメージ図で紹介。発想の逆転により「リスクをとらないリスク」を徹底検証することの重要性も述べた。
AMLの現状とグローバル最新トレンド
EYフィナンシャル・サービス・アドバイザリー株式会社 ディレクター 佐藤 誠 氏
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 マネージャー 板垣 尚仁 氏
基調講演の後、D会場では、Governanceについて5 つのセッションが行われた。最初に、「AMLの現状とグローバル最新トレンド」と題して、EYフィナンシャル・サービス・アドバイザリー株式会社 ディレクター 佐藤誠氏、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 マネージャー 板垣尚仁氏が報告した。
まずは、板垣氏がマネー・ローンダリングや資金供与のリスクと手口を紹介。マネー・ローンダリングへの国際的な対処と日本のコンプライアンス基準を確認し、コンプライアンス・プログラムの全体像を示した。
次に、最近の規制強化の動きを報告。日本の犯罪収益移転防止法などマネー・ローンダリング対策の関連3法案と行政処分事例を示し、海外の規制強化の動きも紹介。制裁金額の大きさについても言及した。
また、マネー・ローンダリングの対策が「最も対応が遅れている国」として、日本がFATFから勧告を受けたことにも触れ、関連する複数取引が敷居値を越えている場合の取扱いなど、今後の課題を取り上げた。
続いて、佐藤氏が、これからのAMLトランザクションモニタリングについて解説。AMLモデルの堅実な検証なくしては、金融機関は重大なリスクにさらされるとして、AMLモデルの検証の重要性を説いた。
最後に、近未来のAMLモニタリングについて、今後は規制当局の高まる要望に合わせて、より高度なプロセスが全体的な戦略の一部として考慮されることが必要になるだろうと述べ、AML最適化とチューニングについて解説した。
FinTechがもたらすこれからの金融業界〜本邦金融業界競争力向上を考察〜
アビームコンサルティング株式会社 金融・社会インフラビジネスユニット
銀行・証券セクターリーダー プリンシパル 新井 俊彦 氏
シニア・マネージャー 小山 元 氏
続いて、「FinTechがもたらすこれからの金融業界〜本邦金融業界競争力向上を考察〜」と題して、アビームコンサルティング株式会社 金融・社会インフラビジネスユニット 銀行・証券セクターリーダー プリンシパル 新井俊彦氏と、シニア・マネージャー 小山元氏が報告した。
まずは、新井氏が「Fintech=Fin(ance)+Tech(nology)」の登場と拡大について報告。金融サービスに革新性を取り込むプレイヤーとして台頭しており、欧米を中心として、利用者に選ばれる中核的なサービスを提供するケースが多く発生していると説明。
既存の金融機関にとって、手数料や利息を得てきた領域が新規プレイヤーに代替されることで空洞化する懸念があるが、Fintechの台頭によりそれが加速していると述べた。
次に、小山氏が、FinTechがもたらすインパクトにおいて注目される動きとして、クラウドファンディング、決済、個人向け投資アドバイスの3つを取り上げて解説。
続いて、外銀のFintech活用の取組み事例を紹介し、フランスの銀行がFintechを集めてお客様の要望を実現するサービスを実現していることや、スペインの地方銀行がグローバル対応の武器にしていることを報告。アジアへの展開を図る日本の金融機関にも参考になると述べた。
最後に、日本の金融機関がとるべきアクションについて考察。今後Fintechの活用が本格化し、差別化・競争力向上を実現するためのアプローチが重要になると述べ、具現化の鍵はIT活用ポリシーのオープン化にあると述べた。
アジア進出をサポートする
融資業務トータルソリューション
日本ヌークレアス・ソフトウェア株式会社 ソリューション部
シニア・マネージャ 岡島 正修 氏
続いて、「アジア進出をサポートする融資業務トータルソリューション」と題して、日本ヌークレアス・ソフトウェア株式会社 ソリューション部 シニア・マネージャ 岡島正修氏が報告した。
はじめに、ヌークレアス・ソフトウェアと日本ヌークレアス・ソフトウェア株式会社について紹介。同社の融資ソリューションFinnOneは、銀行やカード会社、リース会社等のグローバル企業で利用され、英国誌IBSの融資ソリューション販売リーグにおいて7年連続で販売件数TOPとなっていると報告。
FinnOneは、案件発掘から審査・承認、ローン実行・管理そして延滞債権管理までを総合的にカバーするトータルソリューションであり、モバイル対応も備えた最新のアーキテクチャーによる柔軟なシステム拡張性により、業務の拡大、多様化に迅速に対応できるソリューションであると述べた。
次に、新興ビジネスへのチャレンジとして、日本の金融機関が優先すべき戦略を指摘。融資ビジネスが成長へのステップの鍵になると述べ、FinnOneが新たな融資ビジネスのパラダイムを可能にし、新規顧客の獲得に貢献できることをアピール。既存顧客に対しては、多様な魅力ある商品の提供を可能にし、顧客中心主義を実現できるとした。
最後に、コスト削減とプロセスの向上を実現したインドの大手金融会社や、東南アジアで業務を展開する銀行が不良債権の削減を実現した事例を紹介。アジア固有の案件で得られた多くのノウハウを提供できることを述べた。
金融機関の為のクラウドサービスの選び方〜安全・安心なファイル転送を実現するには〜
NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 ソリューション事業本部 マネージャ 谷口 裕志 氏
続いて、「金融機関の為のクラウドサービスの選び方〜安全・安心なファイル転送を実現するには〜」と題して、NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 ソリューション事業本部 マネージャ 谷口裕志氏が報告した。
谷口氏は、まず金融機関がファイル共有・転送のクラウドサービスを検討する理由と背景について説明。クラウド利用の対象となる業務について「リスクベースアプローチ」を適用し、経営判断のもと適切なリスク管理策を策定することが重要だと述べた。
また、金融機関において機密性が「高」、可用性が「高〜中」の業務においてクラウドサービスの導入が進んでいる現状と、現場が無料のクラウドサービスを許可なしに使う「勝手クラウド」の問題が起きていることも報告した。
次に、ファイル「共有」サービスとファイル「転送」サービスの違いと特徴を説明した後、金融機関としてサービス選定の際に考慮すべきポイントについて解説。「対象となる業務・用途のトランザクションモデルの確認」→「リスク管理方針、セキュリティポリシーの策定」→「利用ユーザ数(利用ボリューム)の推測」といったアプローチ法を示し、業務目的にマッチしないツールを利用するリスクについても具体的に説明した。
続いて、金融機関のクラウド利用において考慮すべき主なリスクと管理策を説明。最後に、同社のセキュアファイル交換サービス「クリプト便」の金融機関における導入実績と活用事例を紹介した。
人口減少を見据えた店舗統廃合の行方〜営業店と要員のあるべき再配置の姿〜
株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティングユニット マネージャー 上條 洋 氏
D会場の最後のセッションでは、株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティングユニット マネージャー 上條洋氏が、「人口減少を見据えた店舗統廃合の行方〜営業店と要員のあるべき再配置の姿〜」と題して報告した。
上條氏は、はじめに、地域金融機関に影響を及ぼす最大のマクロイベントである人口減少の構造を再確認。現役人口と老年人口の見通しや老人人口マーケットの予測、相続に伴う対象預貯金の都道府県外流出入見通しなどを示した。
次に、銀行店舗の利用状況や年代別のチャネルの使い分け、ATMの進化の状況を見ながら、国内金融機関の店舗数の推移をグラフで示した。
続いて、今後の金融機関店舗の行方について説明。「顧客のニーズを待ちかまえる店舗」から「顧客ニーズを捕捉する店舗」「顧客ニーズを創出する店舗」への変化が必要であると述べ、@店舗の小型化・モジュール化、Aリアル店舗とデジタルの融合、Bコミュニティプラットフォーム化といった店舗の形態について要点を解説。それぞれの事例を紹介した。
最後に、今後の店舗配置を想定。母店に集中する帳票や端末エントリーを管理する事務センターの設置や、地域コミュニティに入り込む小型店舗の配置が予想されると述べ、店舗人員の役割の変化についても言及した。
すべてのセッションが終了した後、懇親会を開催。多くの参加者で会場が埋め尽くされ、講演者や参加者同士で活発に意見交換する姿が見られた。なお、金融フォーラムの次回開催は2016年5月20日(金)に予定されている。